午前9時起床。
バスの出発は午後2時半だからまだ余裕がある。
のんびりシャワーを浴びて11時にチェックアウト。
フロントのおじさんは「他の日本人に宣伝してくれよ」とビジネスカードをくれた。
確かに値段は安いけど、あの狭い部屋じゃ自信を持ってお勧めはできないなぁ。
早めに行ってランチでもしていようとターミナルに到着すると、昨日チケットを売ってくれたおばちゃんが「ベイルート、ベイルート!」と叫んで1台のバスを指さしている。
どうやらこのバスに乗れと言っているようだ。
昨日、僕が時間を聞き間違えたのか、それともおばちゃんの勘違いだったのか、いずれにしても早く出発できるのは僕にとっても好都合。
行き先を何度も確認してバスに乗り込んだ。
バスは12時ちょうどに出発。
草木もまばらな黄土色の乾燥した岩山の間を抜けていく。
頂上に見えるのは軍事施設だろうか、ときおり機関銃を手にした兵士が見かけられる。
バスのシートはややヘタっているものの、冷房が適度に効いて快適だ。
40分ほど走って国境に到着した。
入国時に受け取ったカードとパスポートを見せるだけで手続きは完了。
警備の兵士に「ここで写真を撮ってもいいか?」と尋ねると「OK!」と笑って答えてくれた。
さらに10分ほど走ってレバノンのイミグレーションに到着。
ここでツーリストビザをもらうのに2万5000レバノンポンドの手数料が必要なのだが、予想通り周辺に銀行やATMは見当たらない。
ダマスカス市内でも両替所を見つけるたびに聞いてみたのだが、レバノンポンドを扱っているところはなかったのだ。
そんな事情を見透かしたかのように闇両替のお兄ちゃんが「チェンジマネー?」と声をかけてくる。
レートは悪いに決まっているが背に腹は代えられない。
使い残しのシリアポンドと米ドルをレバノンポンドに両替する。
ちょっと粘ったらUS$1=1300L£が1400L£になった(笑)。
バスの中で配られた入国カードとパスポート、それに手数料を払って無事2週間のツーリストビザを獲得。
よかった、よかった。
国境を越えてレバノンに入ったとたんに緑の生い茂った山が増えてきた。
道ばたの看板にも英語の表記が多く、シリアとは明らかに違う文化圏に入ったことを実感する。
バスの中でウトウトしていたらいつの間にかベイルートに到着していた。
時計を見ると午後3時40分。
寝ぼけたままバスを降り、気がつくと「ハムラまで5ドル」というタクシーに乗っていた(笑)。
ベイルートは1990年まで続いた内戦で旧市街の安宿がほぼ全滅。
中級ホテルはハムラ地区に集中しているという。
ガイドブックには「最低でも1泊US$20が相場」とあるが、僕はインターネットで1泊US$10のホテルを見つけていた。
ハムラ通りに面したSan Lorenzo Hotel。
写真だとそこそこきれいに見えるが、床はほこりだらけだし、お湯の出ない共同シャワーは掃除をした形跡が見られない(笑)。
それでもベッドだけは清潔なので僕には十分だ。
荷物を置いてさっそく街歩きに出かける。
ハムラ通りを西に向かっていくと…
おおっ、地中海だ!
海は青く、家族連れが岩場で海水浴を楽しんでいる。
海岸通りにはパームツリーとリゾートホテルが並んでいる。
まさか中東でこんな景色が見られるとは思ってもみなかった。
さらに歩いていくと、ハードロックカフェ!
そしてマクドナルド!
思わず、イスタンブール以来ごぶさただったビッグマックを食べてしまった(笑)。
ここベイルートはかつてフランスの委任統治下にあったこともあり“中東のパリ”と呼ばれていたそうだが、確かにダマスカスに比べると近代的な都会だ。
金銭的にはどこでも米ドルが通用し、なにも両替しないのに僕のポケットにはお釣りのレバノンポンドが貯まっていく。
英語も問題なく通用し、過ごしやすいといえば過ごしやすいなぁ、と思いながら旧市街に向かって歩いていたときだった。
高層ビルに残された砲弾の跡。
ここだけではない。
民家にも、
教会にも、
あちこちに内戦の傷跡が残されている。
こんなに生々しい市街戦跡を見るのは初めてだ。
1990年といえば僕はもう駆け出し放送作家として報道番組を担当していたはずなのに、レバノンの内戦を伝えるニュースはほとんど記憶に残っていない。
それだけ僕にとって中東は遠い世界だったのだろう。
いや、こうして実際に訪れるまで中東は僕にとって別世界だった。
今回の旅で1つの街に滞在できるのはたかだか数日ずつ。
それでもそこで見聞きしたことは確実に僕の中になにかを残していく。
それは、僕の世界地図から別世界を1つずつ消していくことなのかもしれない。
<今日の支出>(1S£<シリアポンド>=約2.5円)(100L£<レバノンポンド>=約8円)
ホテル代(2泊分) 400S£
クッキー 25S£
レバノンのビザ 2万5000L£
タクシー US$5
昼食(ビッグマックセット) 6650L£
アイスクリーム 2000L£
インターネットカフェ(20分) 2000L£(日本語表示ソフトD/Lできず)
マルボロ2箱 4000L£
絵はがき3枚 3000L£
夕食(パン、スポーツドリンク、チョコバーなど) 1万3600L£
これ、日記才人(にっきさいと)の登録ボタンです。いつもその1票に励まされてます。 |