午前9時起床。
Ganeshさんのデスクから昨日の日記をアップして、朝食をとる。
結局、今日は1日車を借り切ってカトマンドゥとその周辺を回ることにした。
ドライバーはカン・チャ・ラマ君(27才)。
2児の父であり、明るく誠実で親切な好青年だ。
まず最初に向かったのは丘の上に建つスワヤンブナート。
俗に“モンキーテンプル”と呼ばれるだけあって、参道ではたくさんの野生猿が参拝者の食べ物を狙っている。
階段を登りきると、白い仏塔を中心にお堂や巡礼宿が並んでいる。
カン・チャ・ラマ君は「僕はドライバーでガイドじゃないから…」と謙遜しながらもそこは敬虔な仏教徒、僕の質問には丁寧に答えてくれる。
続いてカトマンドゥ市内を横断してボダナードへ向かう。
事前に「ネパールの道路は悪路だから」と言われていたが、舗装率は90%以上。
カンボジアの国境ルートよりはずっと快適だ。
で、ネパール最大の仏塔を誇るボダナードへ。
「仏塔の上にある4つの顔はすべてを見通す仏陀の目」
「5層構造になっているのは土、水、火、風、空を表している」
「あの建物にはダライ・ラマも泊まったことがある」
カン・チャ・ラマ君の解説も絶好調だ。
のどが乾いたのでコーラでも飲もうと売店に入ろうとしたらカン・チャ・ラマ君が僕を制して1人で2人分のコーラを買ってきた。
なんでも僕が買うと観光客プライスになってしまうが彼ならローカルプライスで買えるのだという。
僕が自分の分を払おうとすると「いいよ、いいよ」といってどうしても受け取ってくれない。
「じゃあ、昼飯は僕がおごるよ」と、ここはごちそうになることにした。
そして、ネパール最大のヒンドゥー寺院、パシュパティナートへ。
牛の歩く参道を通って正門まで来たが、ヒンドゥー教徒以外は寺院の中には入れない。
さらに、この先はライセンスを持ったガイドしか同行もできないというので1人で歩いていくと、数人のガイドに囲まれた。
昨日の不愉快さを思い出し、はっきり断って歩き始めると、片言の日本語を話すその中の1人が「私は日本語を勉強しています。お金はいりませんから私の説明を聞いて下さい」と言ってついてきた。
そんなこといって後でガイド料を請求するヤツもいるからなぁ、と半分疑いながら距離を置いて歩くことにした。
橋を渡ると川沿いに煙が上がっている。
なんだろうと近づいていくとガイド氏が日本語で説明する。
「ここは火葬場です。ヒンドゥー教ではここで死体を焼いて聖なるバグマティ川に遺灰を流すと生まれ変わると信じられているのです」
僕が近づいたとき、今まさに火を着けられようとしていたのは、なんと5〜6才の子供の遺体だった。
ショックだった。
見たくないと思いながら足はそこから一歩も動かない。
「火を着けているのは彼の父親でしょう。これは男の親族の仕事で…」
「向こうには不治の病の人たちが住んでいるホスピスがあって…」
淡々と説明するガイド氏の説明も半分くらいしか耳に入らない。
そういえばカン・チャ・ラマ君が車の中で「ネパールには医療保険がないから貧乏人は病院に行くこともできず、黙って死を待つしかないんだ」と話していた。
この子供ももしかしたらそうだったのかもしれない。
対岸では同じ年くらいの子供たちが無邪気に水遊びをしている。
ガイド氏に促されるままにパシュパティナートをグルッと1周。
結局最後までガイド料を請求してこなかったガイド氏にほんの気持ちだけだがチップを渡す。
「頑張って日本語を勉強していいガイドになって下さい」といいながら。
世界中どこへ行っても母国語のガイドや情報源が多く観光に不自由しない英語圏のツーリストを僕は羨ましく思っていた。
いくら留学直後で多少の英語ができるとはいっても、細かいニュアンスや効率を考えれば母国語である日本語の方が理解が深いに決まっている。
その点、このガイド氏やアンコールワットの若者たちのように日本語を積極的に学ぼうとしてくれている人たちはありがたい存在だ。
本当に頑張って欲しいと思う。
再びカン・チャ・ラマ君と合流し、今日最後の目的地、ナガルコットへ向かう。
途中、田園を見下ろす展望レストランでランチを食べることにした。
約束通り僕がおごろうとすると、彼はドリンクしか注文しない。
「さっきまでお腹がすいたって言ってたじゃんか。オーダーしなよ」と僕が言っても「でも…」と口ごもるカン・チャ・ラマ君。
う〜ん、アメリカじゃめったにお目にかかれなかった“遠慮”や“謙虚”の美学がここネパールにはあるのだ!
結局、半ば強引に僕が注文したネパール風チャーハンを2人でおいしくいただいたのだった。
で、1時間ほど走ってナガルコットに到着。
ここは天気がよければエベレストまで見える展望ポイントなのだが、今日は雲が厚くヒマラヤは見えない。
しかも、雨まで降ってくる始末。
う〜む、こりゃ日頃の行ないが悪かったかな(笑)。
ひたすら待つこと2時間。
かろうじて見えたのは雨上がりの虹と
一瞬の夕陽。
絵はがきによればこんな景色が見えるはずだったのに。
「またネパールに来い、ってことなんじゃないかな」
カン・チャ・ラマ君は最後まで優しい。
今日1日すっかり楽しめたのは彼のおかげだ。
観光ガイドはもちろん、家族のこと、宗教のこと、学校のこと、仕事のこと、お金のこと、などガイドブックじゃ分からないネパールのことをたくさん教えてもらった。
また1つ忘れられない思い出が増えた。
<今日の支出>(1Rs<ルピー>=約1.6円)
朝食(パンケーキ&コーヒー) 95Rs
絵はがき3枚 30Rs
スワヤンブナート入場料 50Rs
ボダナード入場料 50Rs
パシュパティナート入場料 75Rs
ガイド料 25Rs
昼食(ネパール風チャーハン&レモンソーダ・2人分) 175Rs
夕食(カツ丼) 125Rs
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